Plan9の配管工

WindowsやMacOSでは当たり前なアプリケーションと(データ)ファイルの対応付けについて，UNIXでは統一した仕組みが存在しなかった．例えば，Windowsはリポジトリというデータベースにアプリケーションと拡張子の対応付けを持っている．
Plan9では，アプリケーション間でメッセージをやりとりし，さらにメッセージに応じて，設定されたルールに基づいてアプリケーションをディスパッチする仕組みを提供している．これがPlumber，つまり配管工だ．
例えば，シェルで/sys/docをlcすると，PostscriptやPDFファイルがいろいろリスティングされる．その一つにマウスポインタを合わせて，ポップアップメニューから「Plumb」を選択してみよう．page(1)が起動され，選択したドキュメントが表示されるだろう．

ユーザが「Plumb」を選択すると，rioがポインタ位置のテキストをplumber(4)に送信する．plumberはもちろんファイルサーバで，/mnt/plumb/rulesに書かれたルールに基づいて(正確には/user/$user/lib/plumbingが読み込まれた結果が/mnt/plumb/rulesになる)，page(1)を起動する．

plumberのインタフェースは/mnt/plumb以下のファイルだ．先に述べたrulesとsend以外はportと呼ばれ，メッセージをアプリケーションに届けるために利用される．アプリケーションがsendファイルにメッセージを書き込むと，plumberがメッセージを仕分けし，対応するアプリケーションにport経由でメッセージを送ることになる．

cpu% cd /mnt/plumb
cpu% lc
edit		msword		postscript	seemail		sendmail
image		none		rules		send		showmail

メッセージのフォーマットはman plumb(2)でわかるが，struct Plumbmsgである．

               typedef
               struct Plumbmsg
               {
                     char      *src;
                     char      *dst;
                     char      *wdir;
                     char      *type;
                     Plumbattr *attr;
                     int       ndata;
                     char      *data;
               } Plumbmsg;

               typedef
               struct Plumbattr
               {
                     char      *name;
                     char      *value;
                     Plumbattr *next;
               } Plumbattr;

これだけで大体わかりそうだが，動作を確認するためのサンプルプログラムを一つ．
次のプログラムを実行すると，edit portをopenし，メッセージの到着をplumbrecvで待つ．後はメッセージの中身をprintしているだけだ．

#include <u.h>
#include <libc.h>
#include <plumb.h>

void 
main(int argc, char **argv)
{
	int fd;
	Plumbmsg *m;

	fd = plumbopen("edit", OREAD);
	if (fd < 0)
		sysfatal("edit");

	while (m = plumbrecv(fd)) {
		print("msg: src='%s' dst='%s' wdir='%s' type='%s' data='", m->src, m->dst, m->wdir);
		write(1, m->data, m->ndata);
		print("'\n");
		plumbfree(m);
	}

	close(fd);
	exits(nil);
}

rioのメニューからソースファイルをplumbすると，acmeが起動されると同時に，次のように出力される．これは，rioからedit portに対して"/usr/oraccha/src/edit.c"というファイル名が送られたと読めばよい．

term% 8.out
msg: src='rio' dst='edit' wdir='/usr/oraccha/src' type='<nil>' data='/usr/oraccha/src/edit.c'

参考文献