スパコンにまつわる雑談
前回に引き続き、スパコンの話題でお茶を濁す。ISC12が間近に迫り、TOP500でSequoiaが京を抜き1位になるのか注目される今日この頃、スパコン関係の本が二冊出版されたので早速買った。姫野ベンチマークで有名な姫野龍太郎著「絵でわかるスーパーコンピュータ」と、岩波講座計算科学別巻「スーパーコンピュータ」だ。前者は一般向けの読み物でスパコンって普通のコンピュータと何が違うの?という人に向けて、「京」はいつ、誰が、どのように、なぜ作られたのかが書かれている。後者は大御所の先生らによる教科書で、スパコン周辺の技術を体系的に学ぶことができる。
それにしても、最近スパコンがメディアに露出する機会が増えたなと思う。先日、NHKスペシャルでも京とIBMワトソンを取り上げた番組が放送されていた。2002年、地球シミュレータがTOP500の1位になったときも、業界は盛り上がっていたけど、一般的には「京」ほど注目されなかったのではないだろうか? 京は事業仕分けで思わぬ注目のされ方をしたというのもあるけど、この10年間でコンピュータが人々の生活の隅々まで浸透し始めたことが影響していることは間違いない。しかし、コンピュータがどれだけ身近になっても、スパコンは遠い世界の話という心的ギャップは埋まっていない。
このような背景の中、「原子力村」ならぬ「スパコン村」と言われないように説明責任を果たしていかなくっちゃね。「絵でわかるスパコン」にはそのような意図を感じた。本書では、実は、スパコンの中身は完全な一品ものじゃなくて、IntelチップやCellなど民生品も使われるなどのエコシステムが働いていること、津波防災や医療などみんなの役に立つことをやっているんだということが説明されている。また、コンピュータ・シミュレーションがノーベル賞につながった事例がいくつか紹介されていた。最も有名なのは地球シミュレータも活躍した2007年のノーベル平和賞だろう(IPCCとアル・ゴアが受賞)。あと、HPC業界にいれば一度は聞いたことがあるのが計算化学用ソフトウェアのGAUSSIAN。これを開発したジョン・ポープルは1998年にノーベル化学賞を受賞している。このGAUSSIAN、実はLindaというマイナー言語で記述されている。キラーアプリケーションがあれば、言語が生き残る傍証になるだろう。もちろんLindaの思想自体はいろんな言語に生きている訳だが。
別の視点から見ると、スパコン開発で培われたHPC技術はWeb業界からも注目されている。今月のSoftware Designの特集は「ハイパフォーマンスコンピューティング技術」だった。これは先日参加したInfiniband DAY [05]でも感じたことだ。ビッグデータ処理、大規模ファブリック、クラスタなどなど、HPCとWebで必要とされる基盤技術はかなり共通なはずだ。もちろんWeb業界の方が先行している技術も多い。SACSIS 2012の妹尾氏の基調講演でも述べられていたが、HPC業界はWeb業界など他分野との技術・人的交流をもっと積極的に行っていく必要があると強く考えている。
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