「Virtualを仮想と誤訳した責任は我々にあります」

書籍「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」を読んでいたところ、元日本IBMの方によるタイトルの発言が飛び出した。この業界に長くいると、仮想記憶に仮想計算機と「仮想」という訳語にはまったく違和感を感じなくなってしまったが。。。曰く、IBMがVirtual memoryを発表したとき(MVSのことかな*1)、日本IBMが仮想記憶と訳したのだそうな。『virtualは「事実上の」「実質的」という意味であり、virtual memoryは「本来のメモリーではないが事実上メモリーとして使える技術」を意味する。』

大学時代の恩師も次のように言っていた。

「仮想」という概念が、コンピュータの世界に入ったのは、19751965年のことである。MITがMULTICSという汎用大型TSSの構想を発表した。これが現在の、パソコンネットワーク時代の幕開けの狼煙であった。この中の技術に「仮想記憶」の概念が含まれていた。仮想(virtual)とは「虚」であって、「実質的には「実」の働きをするもの」というコンセプトである。現在、'virtual' に「仮想」という日本語訳が定着したが、この概念自身は、日本語には存在しなかった。

恩師は落語好きで、「仮想」というコンセプトを表現した落語として「だくだく」という演題を紹介されている。

仮想という訳語の出本がわかり、ちょっとすっきりしたので、記事を書いてみた。

(追記)やねうらお氏も書いてたよと言うコメントがあったので、あわせて紹介。「virtualを「仮想」と訳していいものか
あと、翻訳に絡む話だと、「「エラー忘却型コンピューティング」なんて言い出したのは誰だ!」なんて記事もあわせてどうぞ。

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

*1:久野先生によると、SVSが先で、MVSはその次とのことです。詳しくはWikipediaなどで。